2000年 8月 の投稿一覧

2000年夏の甲子園|ニュースレターNO.005

今年の夏の大会は、和歌山の智辯学園が圧倒的な打撃のパワーを見せ付けて優勝しました。今年の大会を見て感じたことは、素晴らしい投手がたくさんいたことです。彼らの動きを見ていると、さすがに速いボールを投げられる選手は、身体の使い方が違うということと、体格や体型が素晴らしいということです。それに運動能力が高いことが伝わってきました。

 

身体の使い方について

大会期間中に、長野県に高校野球の指導に出かけましたが、投手の身体の使い方の違いが良くわかりました。私がアドバイスしていることは甲子園に出場する投手にはできており、投球にダイナミックさを感じるわけです。

すなわち、プレート上の軸脚の使い方です。投球動作の運動エネルギーの60%が下半身の動きから作り出されるといいます。その動作ができるかできないかの差がボールの勢い、またダイナミックさの違いとなるのです。特に重心の移動がいかにスムーズに加速されていくかということになります。

速球投手には、間違いなくそれが見られます。持ち上げる脚の使い方によっていろんなフォームが生まれるわけですが、問題は軸脚(支持脚)でしっかりとプレートを押し出して重心を移動させるということです。

私が指導した投手は、結局できないということではなく、体力、筋力的にレベルが低いためにダイナミックな動きとして現れてこないということでした。特に投げるということを上半身の腕や手で投げると勘違いしていることが多いのです。そうすると、いくらがんばってもボールに勢いがなく、いわゆるボールが伸びずにお辞儀することになります。

打つことも同様で、大きなパワーを出すためには、身体の使い方、すなわち運動エネルギーを下半身で発生し、それを打つ・投げる方向に移動し、次に体幹のひねりによって上肢を加速させ、その加速したエネルギーを手の先のボールやバットに伝えるという流れをいかにパワフルにやれるかということで、結局は体力が必要だということです。

 

リラックスすることの大切さ

パワフルにやることが力みにつながることが多々あります。いわゆる「思いっきりボールを投げる」、「思いっきりバットを振る」と言う意識です。この「思いっきり」が力を入れるということになり、ボールもバットも加速されないで出てくることになります。

ここで必要なことがリラックスすること、そして楽にやることです。楽にやると力が出ないように思ってしまいますが、そうではなく、楽に動作をすることで加速する自然な動きがわかるのです。その自然な動きを身に付けなければ、たまたまの「ナイスボール」や「ナイスバッティング」になってしまいます。「楽に投げたり」、「楽にバットを振る」ことなら何百回繰り返しても疲れないはずです。それによって身体がその動きを覚えるわけです。

動作のインプットです。後はトレーニングによって身体をづくり、力をつけることです。このような考え方はどんな競技種目においても同様です。楽することは、いいかげんで気を抜いていることではけっしてありません。楽にできなくて、試合でどうして力みを抜くことができるでしょうか。

今年の甲子園で活躍した投手は、特に打撃も素晴らしく、投げることと打つことは下半身の使い方が共通していることが良く見て取れました。パワーの出し方は同じだということです。ホームランバッターは肩も強いということでしょうか。

ジョンソンとグリーンの対決|ニュースレターNO.004

全米いや世界中が注目していた全米陸上のオリンピック予選、男子200mのジョンソンとグリーンの戦いは、決勝で両者がともに左脚太ももを痛め、途中棄権という結果に終わりました。ジョンソンはスタート後50mを過ぎたところ、グリーンは100m付近で左脚ハムストリングスに筋収縮が起こった状態になりました。何故二人とも、このような肉離れ状態になったのでしょうか。

肉離れはアクシデントと考えたり、最大以上の力が出たときに起こるように考えていましたが、先日分子栄養学の斎岡明子先生とこのことについてお話を伺ったときに、なるほどとうなずけるお話を聞くことができました。

特に大きな大会でプレッシャーなど精神的緊張が高まった状態において何を考えなければいけないのか、良い示唆が得られました。それで、先生に少し感じたところをお聞きしましたので、今回はそれを紹介したいと思います。

 

なぜ痙攣を起こしたのか?

『私はジョンソンの走るために生まれてきたような下肢の筋肉を以前からテレビで見てきているので、決勝戦であのように途中で走ることをやめてしまった姿を見て本当に驚きました。

どうして? 何故? 本人はもとより、世界中の人たちが不思議に思っているのではないでしょうか。

ニュートリションを学んだものとして、私は超不足したミネラル⇒マグネシウムのことが最初に頭の中に出てきました。アメリカという栄養補助食品が豊富で、摂るのがあたりまえになっている国なのですから、ジョンソンレベルになれば世界の頂点を目指し、ニュートリションの専門家がつき、献立をはじめ、サプレメントも十分に競技用に摂取していたはずです。

そうしてこれまでの競技においてもプレッシャーに負けることなく、常に世界のトップに君臨してきたのです。しかし今回は、周囲がタイムよりも二人の勝負から、ひいては人格的なところに踏み込んだため、その精神的ストレスは本人はもとより、ニュートリションセラピストの予想をもはるかに超越したものだったのでしょう。

二人の舌戦については、新聞記事にもすごかったと記されていましたが、これは正に「神経戦」です。脳がその時、どれほどのエネルギーを要したか? その神経戦における脳の神経細胞の電気信号のやり取りにおいて、マグネシウムが非常に消耗します。そうすると、カルシウムがどっと入り込み、神経細胞を縮み上げてしまいます。

脳は他の器官と異なって、身体全体のコントロールタワーとしての役目を司っているので、脳内のマグネシウムが不足すると、身体中のマグネシウムが脳へ助っ人として寄り集まります。スタートの30分から1時間ほど前に、腰部に違和感(痙攣ぽい)があったようですが、それを言うと何か言われそうなので黙っていた・・・とか。

それらのことを考えても、彼を取り巻く異常事態と、彼の神経の使いようがわかる感じがしませんか。それはマグネシウムが腰部から脚部にかけて不足しつつあるサインだったのです。

結局、ジョンソン選手の身体中のマグネシウム(代謝に必要なミネラル中のミネラル)が脳神経に集まったままスタートしたのです。そんな状態で脚部の神経と筋肉の使用に欠かすことのできないマグネシウムが脳からの指令で脚部へ行ったとしても、絶対量が不足しているはずです。そうするとそのマグネシウムの不足したところへカルシウムが入り込み、神経・筋肉細胞が縮む ⇒ 引きつる ⇒ 痙攣 ということになります。

同様のことがグリーン選手にも起こっていたのです。オリンピックに出場する前に、マグネシウムとカルシウムパワーに負けたジョンソンとグリーン選手、本当に残念です。

指導者は当然のことですが、アスリート自身ももっとミネラルのことを学び、マグネシウムの落とし穴にはまらぬようにしてほしいと願っています。』

 

独り言・・・

私に10分ずつ時間をくれたなら・・

競技の約1時間前、ジョンソン選手に私のプランニングした(M+B)Xというサプレメントを摂ってもらう。飲み終えたら、「一曲歌いましょうよ」とねだる。デュエットが終わったとたんに、彼はワッハハッハ・・・ 私もつられてワッハッハ・・

背丈の違い以上に音程のずれに思わず笑いが。そしてニッコリしながら握手したジョンソン選手の手は、程よく温かく柔らかかった。ホッ!(私)

それから急いでグリーン選手のもとへ。同じ事をしてコール場所にスタート35分前に着く。そして二人はこれまでのトレーニングの成果を見せてくれた!!

最高、 勝負は?

(まあいいか、私の仕事はここまででいい)

以上のお話を伺って、栄養学、特に分子栄養学について興味をもたれたことと思います。常に斬新な考え方をもって、スポーツトレーニングを総合科学・統合科学として作り上げていかなければいけないと思います。新しい考えは、否定することなく、いろんな角度から分析していく広い視野を持って生かしたいものです。