2002年 2月 の投稿一覧

冬季オリンピックを振り返って|ニュースレターNO.041

ソルトレーク冬季オリンピックも終わりました。日本選手団は、当初10個のメダルを期待していましたが、結局はモーグルの里谷とスピードスケートの清水選手の金と銅の2つのメダルに終わりました。その2人は、いずれも本番まで不調と怪我にあえいでいた選手だというのも何かを考えさせてくれる出来事のように思います。

オリンピックが始まって3日目の感想を前回のニュースレターに書きましたが、その後注目していろいろ選手の動きを見られたでしょうか。

特に、スピードスケートと距離スキー、そしてジャンプ競技を見ているといろんな考え方ができるものだと感じました。前回に大腿四頭筋依存症と書きましたが、スピードスケートやジャンプ競技では、日本選手の大腿四頭筋に頼った滑走やジャンプ動作が目に付きました。

またフィギュアスケートでもジャンプ動作の違いが目に付きました。大腿四頭筋に頼った動きをしていると、どうしても太ももが横に張り出して脚が太く見えます。ジャンプ競技や自転車競技では、太ももの太さが勝負を決定するようにさえ言われているようです。

しかし、スピードスケートを見ているとどうしても大腿四頭筋を使って滑走しているようには見えません。シューズに体重をかけてやや後方に股関節の伸展動作を使って押し出しているように見えるのです。またカーブのすべりも日本選手は膨らまないように速いピッチで足を入れ替えていますが、外人選手は外側にしっかり押し出しているように見えました。

直線ではすべりのストライドの長さが歴然としていたようです。この動作の違いが、外国選手と日本選手のお尻から脚の形の違いに顕著に見られます。

まだスケート選手に会って話を聞いたことがないのでわかりませんが、選手の滑走中の意識ポイントを知りたいと思いました。日本選手もワールドカップで活躍していたのですから、もっと上位に入る選手もいたはずです。何故実力が出し切れなかったのでしょうか。高地であったということはあまり考えられない気がします。

それは、ほとんどの日本選手はスタートから飛ばしてエネルギー切れを起こしていたように思われます。以前に乳酸の話を書きましたが、一度飛び出したらグリコーゲンは持っている量に限りがあるので、使えばなくなってしまいます。そしてガス欠を起こすわけです。

期待にこたえられなかった選手はほとんどこのガス欠状態でした。滑った後の苦痛の姿は、高地での酸素不足によるものではなく、ガス欠で乳酸がたまって筋肉が動かない状態です。筋肉を太くしてグリコーゲンの量を増やしたまでは良かったのですが、問題は如何に効率よく使うかということです。

そのために必要なことは、イーブンペースです。オリンピックの舞台で勝負が決まるタイムと自分の力を比べてみれば自ずとラップタイムは出てきます。

そのラップタイムを守らせ、それで目標タイムを出すことが大事であったように思うのですが、ほとんどの選手はそれができずに、オーバーペースでガス欠を起こしました。陸上競技と異なり、タイムを競う競技ですから、レースの駆け引きはほとんど考える必要がないはずです。

これはコーチの考え方に問題があるのでしょうか、それとも選手が理解できていないのでしょうか。なんとも理解しがたいことです。500mの堀井選手を見ても解るように、35秒前後持たないわけです。やはり500mにもペースがあるということでしょう。

これからどんなトレーニングをすればよいかという問題ではなく、もう一度スケーティング動作における股関節の使い方、いわゆる氷への力の伝達方法を考え直すことと、エネルギーの使い方、ペース配分の理解が必要だということではないでしょうか。

力はあるのに、それを発揮できないことは残念です。今回の結果について、何をどう分析するか、単純に高地対策が足りなかったというような幼稚な反省は聞きたくないものです。

力の伝達方法ということについては、ジャンプ競技もまさしくその違いが結果になったと考えられます。選手は現状の力を十分発揮したと思われます。ただし、ジャンプの仕方が根本的に異なるように、私の目には映りました。

上半身から前方に起き上がるような感覚で、股関節が伸ばされ、次に膝関節が伸ばされてスキーに力を伝える動きです。日本選手のジャンプは、正に大腿四等筋をフルに使って飛び上がろうとする踏切です。これでは飛び上がる意識のほうが優先され、肝心のスキーに力をフルに伝えることができません。

このあたりが微妙なところですが、金メダリストのスイスの選手は本当にすばらしいジャンプでした。その動作は、飛び上がるの動作ではなく、立ち上がり動作をしていて、そのことによって下方のスキーにうまく力を伝えており、膝から下が完全に固定されていたように見えました。

考えてみれば、時速60キロは超えている状態で、ジャンプという感覚は難しく、立ち上がるぐらいの感覚にならないといけないかもしれませんね。第一、足に重いスキーを履いているのですから、上に飛び上がろうとすれば逆にスキーの重さで下に引っ張られて抵抗を受けるように思われます。

素人の私の考えですが、考えられることはたくさんあるはずです。大腿四等筋を使った「上方へのジャンプ」意識と股関節を意識した「立ち上がって下方に押す」感覚のジャンプの違いを知りたいものですね。

今回のジャンプ陣の反省も注目したいですね。そして分析の中に、飛び出し動作の違いが出てくれば日本のジャンプ陣も世界で戦えるはずです。楽しみにしましょう。その反省でコーチのレベルがわかるはずです。

もう一つ大きな問題は、ピーキングの問題です。オリンピックの前に調子が良かった選手も結構いたようですが、結局はダメでした。単に精神的なプレッシャーということであれば、それは経験をつめばよいということになりますが、ピークがずれた選手も多く見られたように思えます。本当にオリンピックに合わせた計画と調整がなされたのでしょうか。トレーニング計画がどのようなものであったのか、知りたいものですね。

オリンピックサイクルの4年周期、オリンピックまでの1年間、いずれの期間にもトレーニング波があったのでしょうか。簡単に言えば鍛えるところ、実践するところ、休むところということです。毎年頑張っていたのでは当然焼き切れてしまいます。

そういう意味では、スピードスケートの清水選手や岡崎選手のオリンピック前までもうひとつという状態は、逆に現状のピークに持ってこれた一つの要因になってのかもしれません。

1年、2年、また4年に一度、目指す大会で100%力を発揮するためには、本当にたくさんの要因があり、一つずつチェックする必要があります。トップアスリートほどその分析が必要であり、より細かな分析が要求されます。何をどのように分析するか、今回の冬季オリンピックはいろんな見方を提供してくれました。

皆さんもぜひオリンピックの感想をお寄せください。

ソルトレイクオリンピックを観て|ニュースレターNO.040

ソルトレイク冬季オリンピックが開幕しました。その中で、ジャンプと複合、そしてスピードスケートを見て感じたことを書きたいと思います(まだ3日目を終えたところです)。

複合競技は、昨年合宿に数日参加したこともあり、注目していました。特に荻原選手がどうなるのか。ジャンプと複合は、特にレベルダウンした感が強く、その原因はいろいろあると考えられています。1つには、日本人に不利になったとされるスキーの長さが短く規制されたことが挙げられています。

しかし、日本人と同じ体格の外国選手が、活躍していることもあり、この問題も問題でなくなっています。ここ数年間、身体を軽くするために減量に取り組んだようですが、それによってパワーも減少させてしまったようです。

それに気がつき、昨年から筋力トレーニングを積極的に導入したと言うのが現状です。このことだけを見ても、パワー種目でありながら、筋量・パワーを落とすと言うとんでもない考え方に行き着いたところが常識では考えられません。それがナショナルチームであると言うことが、情けないという一言です。

昨年からの筋力トレーニングで、それなりの成果が見られるようになり、今回のオリンピックも期待されていましたが、結果的にはもう1つと言えますが、現状の結果ではなかったかなと思います。私が気になったのは、踏み切り動作です。

日本の選手と外国選手の踏み切り動作はまったく異なります。これはスピードスケートの滑走動作にも感じました。

日本選手の踏み切り動作は、クラウチングスタイルから、膝の伸展動作、大腿部を使った立ち上がり動作が見て取れます。

しかし、外国選手の踏み切り動作は、上体のお越しと、股関節の伸展動作から始まっているように見えます。すなわち、股関節の伸展動作によってエネルギーを生み出し、それを足に、スキーに伝達すると言うことですが、日本選手は逆で、両脚で踏ん張って上体を持ち上げていると言うことになります。

このことだけからも、踏み切り動作のパワーに大きな差が出ているのではないかと考えられます。能力的には、差がないけれど、この力・パワーの伝達の差になっていると思いました。

結局は、踏み切り動作の基本的な考え方に問題があるような気がします。そのことが荻原選手にも大きな問題になったように思います。

昨年からフィンランドのコーチを呼んで、クロスカントリースキーのレベルアップに力を入れてきました。私も合宿で、そのコーチと話をしましたが、しっかりした理論を持っていて、トレーニングプランも段階的な計画を立てられていたので、必ず結果は出るだろうと思っていました。

しかしそのとき感じたことは、クロカンは強くなってもジャンプに問題があるのではと言うことでした。ジャンプのためのトレーニングに理解できないものであったからです。基本的には踏み切りのパワー種目ですから、その対応が必要なはずです。

しかしそこで行われていたトレーニングは、伝統的なアプローチを安定させると言うアイソメトリック系のエクササイズが多くありました。踏み切り時のパワーアップにつながるようなエクササイズがほとんど見られなかったからです。

クロカンのためのトレーニングはフィンランドのコーチがしっかりしたものを作られていましたが、ジャンプのためのトレーニングは日本のコーチによるものでした。私の目からなるほどと言えるものはなく、思い出すこともできません。

特に、荻原選手は32歳と言う年齢を考えれば加齢による自然な体力の低下があるはずで、全盛期の筋力、パワーに近づける努力をしなければいけないはずなのに、恐らくこれまでと同じようなトレーニングをしていたはずです。そのことが今回のオリンピックにも結果として出たようです。

彼のジャンプは2本とも、現状では最高のものでした。しかしどう見ても踏み切り動作が遅くなって、パワーが低下していることが解りました。課題の分析が確かであれば、後5mは楽に飛べていたはずですし、そうなればメダルにも手がとどいたはずです。

翌日の15キロのクロカンは、優勝者と30秒程度の遅れをとっただけです。クロカンでは、世界のトップと引けを取らなかったのです。これはクロカン練習の成果です。伝統的練習やトレーニングにこだわることの典型的な失敗例ではないでしょうか。

ジャンプ競技からは踏み切り動作の違いを感じたわけですが、スピードスケートでも蹴りと言うかプッシュと言うか、スケーティング動作の違いを感じました。一昨年のシドニーオリンピックの自転車競技を見て感想を書いたと思いますが、まったくそのときと同じ感想です。

日本選手は、「大腿四頭筋依存症」のように思われます。大腿四頭筋の太さがそのまま結果に現われるような考えをもっているのではないでしょうか。私には外国選手はどう見ても股関節の伸展動作を使って滑っているようにしか見えませんが、日本選手は大腿四頭筋を使って滑っているように見えます。

そのことが特にスピードの急速なダウンにつながっているように感じます。グリコーゲンを使い切ってしまえば、その後どうにもなりません。そこにはペース配分が何よりも重要に感じますが、そのような作戦はこれまで見かけません。いかに効率よくエネルギーを使い切るかということが最も大事なはずですが・・・。

エネルギーの使い方と共に問題に思うのは、スケーティング動作です。日本選手は、大腿四頭筋を使って氷を押そうとしているのですが、これでは上体を持ち上げようとしていることになり、氷に力がうまく伝達されないはずです。

日本のスキーのジャンプ選手と同じ間違った理解によるものと思います。スケートの場合には、上体を立ち上げながら、股関節の伸展と言うわけにはいきません。

それで外国選手をよく見ていると、上体はそのままで、膝の角度をほとんど変えることなく、棒状に支えにして、そのまま股関節の伸展動作を使っているように見えます。そして、やや後方外側に押し切ることでスピードを増しているように感じます。日本選手には、膝の曲げ伸ばし的な動作が多く見られます。

大腿四頭筋は、膝の伸筋ですが、単純に考えれば、ボールを蹴る動作の膝の伸展動作がメインのはずで、動きとしては、足先を身体の前方にもっていく動作です。前方に進むためには、力は後方に伝える必要があり、その中心となるのは、股関節の動きになるはずです。

大腿四頭筋を強化するために、スクワットは欠かせないものですが、その考え方を間違えれば、パフォーマンスにつながらないことになると言うことを理解しなければいけません。

今回のオリンピックは、いろんな意味で動きを捉える勉強になりました。アメリカの選手でスピードスケートの男子5000mで自己記録を14秒ほど短縮して世界記録を出し、銀メダルを取った選手がいます。彼の脚の形は素晴らしいように思えます。臀部、大腿部、下腿部、この3つの部分をよく見てください。

またその関係も見る必要があります。からだづくりと効率の良い動作の習得は、トップアスリートになるための基本です。そのためには、これまでの伝統的なトレーニングやテクニックと言うものについて、もう一度、また常に見直す必要があると言うことです。