2008年 2月 の投稿一覧

本物のスポーツトレーナーの育成を目指して|ニュースレターNO.186

嬉しいお知らせがあります。マトヴェーエフ氏の著書の件ですが、7、000円ほどになるとお知らせしておりましたが、先般出版社の方と表紙の件でお会いしたとき、5、000円を切る4、800円ぐらいにしたいとおっしゃって頂きました。まだ、正式ではありませんが、ほぼその当たりで出版できるようです。また、多くの方から購入を希望する連絡をいただいております。

当然、会員の方には割引価格で購入いただける予定です。まとめて、購入いただける方につきましては、さらにディスカウントしていただけるように出版社とも話をしております。3月20日頃には、出来上がるだろうとのことです。楽しみにお待ちください。

さて、今回は、毎年この時期になると、入学生の募集と入学してくる学生たちにたいして、「本物のスポーツトレーナーの育成」ということが毎日のように頭の中を駆け巡ります。本物を育てるには、何をしなければいけないか、本当に日々勉強

せっかくですので、本物のスポーツトレーナー育成のために私が何を考えているのか、私の頭の中をのぞいていただけたらと思い、私の思いを紹介させていただきます。

『現状の問題

世界大会やオリンピックが開催されるたびに、世界で活躍できる選手を育てるにはどうすればよいか、いろんな考え方がありますが、結局は体力的な差に落ち着くように思います。そして、基礎体力の上に技術が成り立ち、技術のレベルアップは基礎体力のレベルアップによるものであるという認識をすることです。

その基礎体力とは何か、それが十分理解されていないように思います。むしろ基礎体力=筋力づくり・ウエイトトレーニングと考えられていることの方が多いかもしれません。それだけウエイトトレーニングが普及し、アスリートに欠かせないものになってきたことは喜ぶべきことだと思いますが、筋力アップ・筋肥大=パフォーマンスの向上という理解がされてしまうことには注意が必要です。

普通に考えればわかることですが、筋力は基礎体力の1つの要素でしかなく、コンディショニングの1つの要素でしかないのです。問題はコンディショニングであり、すべての体力要素をバランスよく高いレベルに引き上げる必要のあることは誰しも理解しているはずですが、どこかに勘違いがあるようです。

よく受ける質問は、「何をすれば」「どんなことをすれば」強くなりますか、ということです。

この質問に答えることが一番難しいし、簡単に答えられないというのが正解ではないでしょうか。問題は、目的です。その選手・チームがどうしたい・どうなりたいのか、何に問題があるのか、その問題を解決するには何をどのようにすればよいのか、といったことを考える必要があります。

そこからスタートです。要するに、現状の分析です。それによってチームや個人を十分把握することです。その際、他人や他のチームと比較する必要はありません。そこに必要なことは、その競技において必要な身体能力・体力要素は何かということです。また、競技の特性もさることながら、その競技に必要な動作・動きを知らなければいけません。

そのような情報が集まれば、後は問題解決の手順に則り、プログラムを作成し、確実に実施していくことです。そのベースになるのは、やはり基礎体力の見直しになるでしょう。当然、そのチームや個人のおかれた状況によってかわりますが、基本的にはそのように考えるべきです。

また次のレベルに進める場合にも、それは専門的なトレーニングよりも基礎的な体力レベルを引き上げることのほうが重要です。この点がわが国において理解されていない部分であり、結局このことが短期間に急激なレベルアップを見せるけれど、その2~3年後は限界を迎えさせてしまっている大きな要因になっています。

状況の分析と個人・チームの目的に見合ったコンディショニングが指導できるストレングス&コンディショニングコーチが必要なのです。ここでも柔軟な思考回路を持った人間性にすぐれたスペシャリストといえる人材を育てる必要があるのです。

 

アスレティックトレーナー

多くの学生たちが「アスレティックトレーナー」という職種に強い憧れを持って活動していることは嬉しいことですが、同時に非常に危険な状況でもあります。それは、アスレティックトレーナーという仕事について本質的なところが理解できていないからです。

学生たちの話を聞くと、まるで自分が専門家になったように思って、「選手を強くしたい」、「私が怪我を治してあげるんだ」、また「私がチームを強くした」、というような思いを強く持っているように感じられます。このことは非常に危険です。特にほとんどの大学は、学生トレーナーたちの自主運営・活動であり、自分たちの判断で行動することが多いようです。

基本的に学生トレーナーは単なる学生に過ぎず、勉強している立場であるという認識が薄いようです。

そして、アスレティックトレーナーの仕事は選手の裏方さんであること、目立つ立場にないことも理解できていないようです。アスレティックトレーナーが選手を育てるのではなく、選手を育てるのはコーチ・指導者であり、それを裏からサポートする役割がアスレティックトレーナーなのです。アスレティックトレーナーとトレーニングコーチが一緒になってしまっていることもあります。

学生トレーナーや医療資格をもたないものは、医療行為、治療行為はできません、許されることではありません。大学に指導者がいなければ個人的にドクターとのつながりを持ちなさいとアドバイスします。これは難しいと思われがちですが、スポーツドクターがどこにおられるか、雑誌を見ればすぐにわかります。

ですから選手に問題があれば、また何か問題を疑えばそのドクターのところに連れて行けばよいし、いつも同じドクターを尋ねればそこでいろんな話を聞くこともできるし、そこから学べることも多いはずです。そうすれば必然的にそのドクターとの関係が生まれるはずです。

トレーナー活動をするには、ドクターの存在は不可欠です。ドクターのアドバイスをもらっても、医療資格のないアスレティックトレーナーにはリハビリテーションなどの指導をすることができません。そうすると何もできなくなりますから、リハビリテーションということに関しては、トレーニングを指導するということで置き換えることができるはずです。

ROMの制限、筋力の低下に関しては、柔軟性の改善や筋力強化ということになるはずですし、ほとんどすべて置き換えることができるはずです。それがリ-コンディショニングといわれるものです。

私も含め、医療資格のないものは行動に注意する必要があります。学生の間、また無資格であれば、トレーニングというものをしっかり勉強して、実践力を身につけることです。リ-コンディショニングエクササイズはトレーニングに置き換わります。非常に低いレベルから非常に高いレベルまで、指導できる知識と実践力を身につけることです。

アスレティックトレーナーの基本は、怪我をしたとき、また何らかの異常が起こったときにいかに適切な処置をするか、そして適切な処置を施して直ぐに専門家のもとに連れて行くことです。そこには、外傷・障害に対する最初の診断ということがありますが、当然診断行為はできません。

したがって、どんな問題が考えられるか疑いを持ってチェックし、適切な処置をすることになります。その疑いが持てるだけの外傷・障害に関する知識は必要不可欠です。そのために、特に必要になるのが人命に関わる緊急処置としてのCPR(AED)や救急法です。CPRや救急法は、資格制度がありますので、学生トレーナーや無資格でアスレティックトレーナーとして活動している人は必ずその資格を取得するべきです。

現場でアスレティックトレーナーとして活動する上で、なくてはならない資格といえるものです。それは、アスレティックトレーナーは常に最悪の状況を考えて行動・対処しなければいけないからです。このことは、トレーナー活動をする上で最初に取り組むべき課題です。

もし無資格でアスレティックトレーナーと名乗って活動しているのであれば、実際に緊急の場面に遭遇したときには何も手を出すことができません。もし最悪の事態が起これば・・・・。それは想像できるはずです。

ですから、アスレティックトレーナーを目指すのであれば、CPR(AED)や救急法の資格をとることです。そこには、緊急処置、応急処置、スプリントの当て方や固定法、包帯法、テーピング、選手の輸送などが含まれますので、それが適切にできるだけでアスレティックトレーナーの80%以上の仕事はできることになります。

あと重要な仕事として、リハビリテーションプログラムの作成と指導があります。これについては理学療法士などの資格が必要です。当然医療行為にあたりますので、無資格者はそれが許されません。そこで先にも書きましたが、トレーニング・コンディショニングの知識と実践力が必要になります。

リハビリテーションは入院中に病院で行われますが、そうでない場合には、ドクターや理学療法士などの指示のもとにどこかで実施することになるはずです。それをサポートすることで学ぶことができますし、逆にこのようなプログラムをこのような計画でやるのはどうでしょうか、とドクターや理学療法士に問い掛けることもできます。問題は責任の所在を明確にしておくことです。

トレーニング・コンディショニングというものは非常に領域の広いものなので、その中に含まれている身体機能の要素をいかに改善するかということについて理論面と実践面の勉強が大変重要です。そして、それらのことすべてがアスリートのリ-コンディショニングに関わることです。身体的、精神的な問題の他に栄養の問題も出てきます。

また、休養の問題も出てきます。特に、わが国においては医療資格制度がありますので、このことに対する対応をきちっとしておく必要があります。特に学生の段階では、自分たちは素人であるという認識と、ほとんど何もできない状況であり、専門家の手伝いをしながら、教員などの指導者からの指導を受けて学ぶ立場にあるということを認識してほしいと思います。

 

ストレングス&コンディショニング

トップアスリートになれるかなれないかは、素材・素質で決まることは明らかなことです。指導者にとって、早い段階でそれを見抜かなければいけません。そして、「この選手であれば、このレベルまでいけば素晴らしい」と、選手個々に目標レベルを定めるべきです。そうすれば、どんな結果に対しても大きな差は出ないはずです。

個人競技であれば理解しやすいことですが、チームスポーツになると、このことが難しくなり、指導者も大きな過ちを犯し、「何故勝てない」と悩んでしまうことが往々にしてあります。問題は、チームの選手一人一人の能力を把握することです。そこからチームの目標を探り出すことです。勝つこと、優勝することが目標の全てではありません。ただし、そのような素材・素質を持った選手は別の話です。

「トップアスリートを育てたい」ということは、指導者の当然の願いです。そのためには、「木を見て森を見ず」ではいけません。選手の現状、将来性など判断しなければいけないことがたくさんあります。だれもがトップアスリートになれるわけではなく、選手個々に応じた方向性を考えてやらなければいけません。

そのためには、それを考える材料が必要です。この選手には、何のために、何をしてやればよいのか、そしてどのレベルまで到達すればよいのか、それを考えてやらなければならないのです。このことは、選手を育てるということに限らず、リ-コンディショニングにおいても、また一般人の健康づくりについても同様です。

目的があって、方法があります。それが方法ばかり探りすぎて、本当の目的を見誤っていることがよく見られます。「これだけやれば・・・・」というようなものは存在しません。まさに「木を見て森を見ず」です。

どの分野においてもプロといわれる人は、その分野に関わる以外にも多くの情報をもち、その上、特別な部分が飛び抜けているといえるのではないでしょうか。ただ知識として知っているだけではどうしようもありません。その情報をどのように活用できるのか、そこにつながらなければいくら本を読んでも、講習会に出ても役に立ちません。

後は、実践での経験と応用力です。自分の頭の中で組み合わせたものが、どれだけ実践で予想どおりの結果となって現れるか、いわゆるモデル化ということです。自分が予想したこと、予測したこととどれだけ近い結果が得られるかということの経験が大切です。そうした経験を積み重ねることで、予想と実際の結果の差が少なくなってきます。

こうすればこうなるという見通し、予測、予見が正確にできるようになれば、本当のプロ・スペシャリストに近づいたといえるでしょう。

ストレングス&コンディショニングコーチへの道は知識と実践力、そして応用力が要求される奥の深い領域ですが、そこにトレーニングのおもしろさがあるわけです。本物のスペシャリトと呼ばれるまでどれほどの年数が必要になるか想像がつくはずです。また、歴史的な流れにも目を向けなければいけません。その道に進むスタートの段階、導入部で、どこで、誰から、何を学ぶか、学べるか、ということが非常に大事なことです。

 

リ-コンディショニング

リハビリテーションとアスレティックリハビリテーションの違いは、何でしょうか? アスレティックリハビリテーションとは、リハビリテーションにアスレティックが付いたということですが、言い換えれば、リ-コンディショニングということになります。一番大きな問題は病院でのリハビリテーションが一般的なリハビリテーションですが、リ-コンディショニングは現場で身体機能状態を受傷前のレベルに回復させるということです。

怪我をする、手術をする、そこの病院でリハビリテーションをする。それで、いつ退院になるでしょうか? どのレベルで退院でしょうか? ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)といいう言葉がありますが、ADLがOKになれば退院になります。日常生活ができれば退院です。その後、通院になり、これが一般的な流れです。

ADLが可能になって、まだ入院されていると病院も困るわけです。患者を入れ替えないといけないからです。要するに身体機能の7~8割であれば、日常生活に問題はないでしょう。食事ができて、着替えができて、トイレに行けて、風呂に入れれば、OKです。少々痛くても、退院させられて、あとは通院になります。

ところがスポーツ選手の場合なら、とんでもないことです。その基準となるレベルが違います。普通の病院では、筋力面で日頃150kgや200kgでスクワットをしている人間が、病院で膝のリハビリテーションをやって、100kgレベルまでできるでしょうか? できるはすがありません。だから、アスリートにとって病院のリハビリテーションでは充分でないわけです。そこの違いです

リ-コンディショニングというのは、アスリートや運動選手が現場に復帰するためのコンディショニング・トレーニングのことです。レベルが違います。これまでスポーツ選手が病院でリハビリテーションをやらなかったのは、病院のPT(Physical Therapist:理学療法士)の中にアスレティックトレーニングを知らない人たちがいたからです。

自分も経験したことがないベンチプレス、スクワットなど、いろいろなウエイトトレーニングや筋力トレーニングを経験したことがないので当然かもしれません。そんなことは理学療法士の専門学校で学びません。徒手抵抗、砂袋、その程度です。同じ筋力強化でも、レベルが全く違うわけです。アスリートの1/10、1/20レベルでしかないわけです。

そうすると、極端な話、ボディービルダーがどんなトレーニングをしているのか知らないといけません。ボディービルディングは、筋肥大するための典型的なトレーニングです。筋肥大が必要なら、そういう人たちのトレーニングについても考えるということです。そういう応用・応用編が必要なのです。

要するに、コンディショニングという知識、実践力がないとアスレティックリハビリテーション、すなわちリ-コンディショニングは指導できないということです。

通常の理学療法士養成の専門学校では、トレーニング理論は教わりません。訓練・訓練法を習います。それだけの知識しかなければ運動選手が来たらどうなるでしょう? 身長185c重120kgのラグビー選手が来たらどのように筋力の回復を図ればよいのでしょうか。まさにピンからキリまで知らなければいけません。多くの情報が必要になります。

そのベースが、「コンディショニング」にあるのです。だから、スポーツ外傷・障害にかかわることだけでなく、こういうものを総合して、アスレティックトレーニングという分野になっています。それで、平成スポーツトレーナー専門学校は「アスレティックトレーニング学科」になっているのです。

 

コンディショニング

「コンディショニング」というのは、いろいろな意味で理解されているので、頭の中を整理する必要があります。「コンディション」というのは、昔からある言葉ですが、「調整」という意味で使われていました。その「調整」は、試合のための調整というように捉えられていました。試合のために疲れないように休もう、栄養を取ろう、という意味を「調整」と呼んでいました。

しかし、アメリカでストレングス&コンディショニングの協会ができてから、「コンディショニング」は確かに「調整する」という意味もありますが、身体的諸機能があるレベルに整えるという意味で捉えられるようになりました。言い換えると、バイオモーター・アビリティ(biomotor abilities)といわれる筋力、スピード、持久力、調整力、柔軟性といった運動能力、身体能力をあるレベルにバランス良くレベルアップするということです。

例えば、パワーを高めたいからパワートレーニングだけをやるという意味ではなくて、パワーもスピードも柔軟性も筋力もすべてレベルアップするということです。すべての身体能力の要素がバランス良く同じレベルになるようにレベルアップすることがコンディショニングです。

それに対して、リ-コンディショニングという言葉も使われています。リ-コンディショニングの「リ(Re)」は、もとに戻すという意味です。もとのコンディションレベルに戻す。怪我をすると先のバイオモーター・アビリティが低下します。それらをもとのコンディショニングレベル、バイオモーター・アビリティのレベルに戻すという意味です。これがリ-コンディショニングです。

ここで是非理解しておかなければならないことは、将来アスレティックトレーナーを目指しても開業権はないということです。必ずドクターの下について、必ずボスがいて活動しなければいけません。独立することはできないし、医療行為もできません。私自身もアスレティックトレーナーの資格も何も持っていません。したがってリハビリテーションというものは教えられないし、教える資格もありません。理学療法士でもありません。

では、何が教えられるかというと、リ-コンディショニング、つまりコンディショニング・トレーニングを教えるわけです。

例えば、捻挫をして元のように膝が伸ばせなくなった。そういう場合に何をしてあげられるでしょうか? 膝関節の可動域、すなわち膝の柔軟性を高めてあげることです。膝の筋力が落ちた場合、膝の筋力を回復・強化をしてあげることです。リハビリテーションを指導するのではありません。リハビリテーションということばに問題があるのです。

ということは分かるでしょうか? 将来アスレティックトレーナーという名称にこだわる必要はないということです。最近、コンディショニングトレーナーという人たちがたくさん出てきました。プロフェッサーでもスペシャリストでもいいでしょう。コンディショニングのプロでもいいでしょう。

選手を育てる、コンディショニングもやる、怪我した後にもとの状態に戻してあげられるプロの人間、すなわちスポーツトレーナーのスペシャリストが必要なのです。基本的には、無資格ですから医療行為はできません。このことを十分認識しておく必要があります。

医療行為をしているという認識を持ちたい人は、そのライセンスを取得すればよいと思いますが、そうでない人はコンディショニングの専門家として考えるほうが、もっと道は広がるでしょう。

 

スポーツトレーナースペシャリスト

「トレーナー」と称するものは、いろいろあります。トレーナーとは「trainする人」ということですが、「train」とは 仕込む、教育する、訓練する、体を鍛える、養成する、しつける、習わせる、教え込む、身に付けさせる、という意味があります。そうすると、トレーナーとは、「何をtrainする人か」ということになります。その「何を」によって、次のようなトレーナーの名称がつけられ、領域が分けられます。

1.スポーツのトレーナー
2.メディカルのトレーナー
3.コンディショニングのトレーナー
4.フィットネスのトレーナー
5.ヘルスのトレーナー
6.ファースト・エイドのトレーナー
7.CPRのトレーナー
8.リハビリテーションのトレーナー
9.リ-コンディショニングのトレーナー

次に、資格の問題ですが、資格とは身分や地位、立場、またそのために必要とされる条件のことで、身分とは身の上、境遇(生活していく上での、その人の環境や立場)のことであり、条件とはある物事の成立、または生起のもととなることがらのうち、それの直接の原因ではないが、それを制約するものということになっています。

その制約とは、物事の成立に必要な規定、または条件であり、規定とは規則や規準を作ること、規則や規準とは法令の条文として定めること、法令の個々の条文となっています。

したがって、資格の問題が出てくるトレーナーは、メディカルのトレーナーということになります。それは、メディカルとは医術の、医療の、医学の領域であるからです。ドクターとの携を密にしたこの領域や名称にこだわる人は、やはり医療関係の国家資格を取得する必要があると思います。それ以外の領域で活動する場合には、特に資格にこだわる必要がないということです。

トレーナー以外に使われる言葉に専門家やスペシャリストがあります。専門家とは、ある学問分野や事柄などを専門に研究・担当し、それに精通している人をいいます。そしてスペシャリストは、特別の人、特に優れた人、特定の・・、といわれる人をいいます。

したがって、スポーツトレーナーの世界で求められるものは、「・・の資格」ではなく、「・・をtrainするトレーナー」であり、そのスペシャリストです。

だから、そのスペシャリストを養成するために平成スポーツトレーナー専門学校では、スポーツトレーナースペシャリストを養成する密度の濃いカリキュラムを作り上げました。そのスポーツトレーナースペシャリストの認定は、当然、人格がよく、コンディショニングとリ-コンディショニングの理論と実践を熟知し、人間のからだをもとの正常な自然体に戻す身体調整の技術を習得した者にしか与えられません。

その認定書が本物のスポーツトレーナーを称することの証となるとともに、他の「・・トレーナー」との差別化になるのです。

ついに校正終了|ニュースレターNO.185

2月に入り、なんとなく落ち着かない日が続きます。学生募集のこと、卒業していく学生のこと、指導している高校生のこと、いろいろ思いをめぐらせていると、不安なような、ワクワクするような、なんとも表現できない気持ちです。

そんな中で、ついにマトヴェーエフ氏の著書の最終校正が終わりました。後は、表紙の決定と3月末の出版を待つだけとなりました。最終ページが619頁となり、すごく厚みのある重厚な本になりました。翻訳をお願いしたモスクワの佐藤さんとせわしなく何度も重ねてきた文章の校正を思い出します。

何度読み返したか分かりませんが、読み返すたびに、?の付くところが出てきます。そのたびに、佐藤さんと連絡を取り合ったことが懐かしく思えてきま

イラストや図は尐ないですが、読めばその理論書たるところが理解できます。また、読み重ねるほど、新鮮な感覚でトレーニング理論を考えることができ、なるほどと思うことばかりが続きます。全体は5部構成になっていますが、皆さんが興味のあるトレーニング理論のところは、第2部にあります。

この第2部のところだけで、トレーニング理論の書として出版できるものです。そこを読んでいて、これまでマトヴェーエフ氏から言われていたことが良く理解できました。

今回は、その翻訳書「ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論」の目次を紹介したいと思います。前にお知らせしたように、会員の方には、割引価格(予定の定価は7、000円位)でお分けできるようにしますので、ご希望の方は御連絡ください。一人、何冊でも結構です。

テキストなどで使われる際は、さらに検討させていただきますので、遠慮なく申し出てください。この本の話しになると、本当にワクワクしてきます。どうぞ、ご期待ください。

序文
監訳者から
翻訳者より

序章(基本概念について)

 

Ⅰ.体育の理論と方法論の一般的基礎

第1部 体育の全般的特性-目的、手段、方法、原則

 

第1章 体育の目的

1. 体育の教育的性格と固有の目的
2. 体育の課題の本質および課題設定の形態
2.1. 体育の目的と基本的課題
2.1.1. 体育の目的の社会的起源
2.1.2. 基本的課題
2.2. 体育の課題の具体化-視点と具体化の形態

 

第2章 体育の手段と方法

1. 体育に固有の手段と方法
1.1. 体育の手段としての運動
1.1.1. 定義-運動の内容と形態
1.1.2. 体育における身体的運動」の技術
1.1.2.1. 運動の技術-一般的概念
1.1.2.2. 身体的運動の技術の実践-指標と原則
1.1.3. 運動の効果
1.1.4. 体育の運動の分類
1.2. 負荷と休息
1.2.1. 運動の負荷
1.2.2. 休息のインターバル-その役割と各種タイプ
1.3. 体育に固有の方法
1.3.1. 運動を厳密に規定する方法
1.3.2. ゲーム、競技的な方法

2. 体育における一般教育学的な手段と方法およびその他の手段と方法
2.1. ことばの作用を用いた方法
2.2. イメージ・トレーニング、メンタル・トレーニング
2.3. 実物教授法に基づく手段と方法
2.4. 機械を用いた方法
2.5. 体育における自然環境上の要因と衛生上の要因

 

第3章 体育活動を規定する原則

1. 体育における実践活動の方針を定める一般的原則
2. 体育における方法論上の原則とその基礎
3. 体育構築における固有の法則性とそれを表した原則
3.1. 体育の過程の連続性および負荷と休息の系統的な交替
3.2. 運動の各種負荷
3.3. 課業の周期性(サイクル性)の構築
3.4. 体育のおのおのの領域がどの年齢に適しているか

第2部 体育の内容と方法論の基本的要素

 

第4章 運動の学習の基礎

1. 体育における学習の目標と学習過程の構造
1.1. 運動の学習による運動能力と習熟、およびその形成の法則性
1.2. 運動の学習における明確な目標設定
1.3. 学習過程の構築の前提と全般的順序
2. 学習の各段階の特徴
2.1. 第1段階(運動の学習の初期段階)
2.1.1. 課題
2.1.2. 代表的な手段と方法
2.1.3. 方法論の特徴
2.2. 第2段階(運動の本格的学習の段階)
2.2.1. 課題
2.2.2. 代表的な手段と方法
2.2.3. 方法論の特徴
2.3. 第3段階(最終的な習熟の段階)
2.3.1. 解決されるべき課題
2.3.2. 典型的な手段と方法
2.3.3. 方法論の特徴
2.4. 習熟した運動を変更する

 

第5章 運動調整能力の養成

1. 養成の対象と課題
1.1. 運動調節レベルを決定する諸能力
1.2. 運動調整能力と関連する能力の養成とその課題
2. 方法論の手段と特徴
2.1. 運動調整能力養成の手段と方法
2.2. 運動調整能力とそれに関連する能力を養成する方法論
2.1.1. 平衡を維持する能力を養成する方法
2.1.2. 筋肉を合理的に弛緩させる能力を養成する方法
2.1.3. 運動の空間上の指標を正確に調整する能力を養成する方法

 

第6章 筋力とスピードの養成

1. 筋力の養成
1.1. 筋力とその養成に関する課題
1.1.1. 筋力の指標と本質
1.1.2. 筋力養成の過程で解決すべき課題
1.2. 筋力養成の手段とその方法論の特徴
1.2.1. 筋力養成の手段とその方法論の基礎
1.2.1.1. 筋力養成の手段
1.2.1.2. 方法論の基礎
1.2.2. スピード-筋力を養成する手段と方法
1.3. 筋力養成過程の全般的特徴
2. スピードの養成
2.1. スピードとその養成に関する課題
2.2. スピード養成の手段と方法論の特徴
2.2.1. とっさに反応するスピードを養成する手段と方法
2.2.2. 運動の速さを決定するスピードを養成する手段と方法
2.3. スピード養成の過程の全般的特徴

 

第7章 持久力の養成

1. 持久力とその養成に関する課題
1.1. 持久力の本質、指標、タイプ
1.2. 持久力養成の過程で解決すべき課題
2. 手段と方法論の特徴
2.1. 全般的な持久力を養成する手段と方法
2.1.1.手段
2.1.2. 方法
2.2. 特殊な持久力を養成する手段と方法
2.2.1. 手段の特徴
2.2.2. 方法論の特徴
2.3. 持久力養成方法の組み合わせ

 

8章 柔軟性の養成

1. 正しい姿勢の養成
1.1. 養成の対象と課題
1.2. 手段と方法論の特徴
2. 身体の柔軟性を養成する方法
2.1. 養成の対象と課題
2.2. 手段と方法論の特徴
3. 身体の筋肉の部分とそれ以外の「受動的な」部分(脂肪分)
3.1. 課題と基塗
3.2. 望ましい手段と方法
3.2.1. 筋量を増やすためのトレーニングの特徴とその方法論
3.2.2. 減量のためのトレーニングとその実施方法

 

第9章 体育の過程における教育的要素の相互関連

1. 明確な方針に基づいて人格形成をする決定的な要因
1.1. 教育的要素
1.2. 教育者(指導者)の役割と指導される側の積極性
1.3. 体育における集団の教育的役割
2. 他の学科と共通する教育的要素とその具体化
2.1. 道徳的教育、イデオロギー的・政治的教育、労働教育
2.2. 知的教育、美学的教育
2.3. 体育における意志力の養成と自己教育の能力の養成

第3部 体育における課業の形態、計画、管理

 

第10章 課業のさまざまな形態

1. 課業のさまざまな形態と共通の特徴
2. 授業形態の課業
2.1. 教育上の観点から課業を行う場合
2.2. 授業構築の論理と方法論
2.3. 授業の分析
3. 体育における授業以外の課業の特徴
3.1. 小規模な形態
3.2. 大規模な形態の課業-自主的な運動、体育、レクリエーション
3.3. 体育における競技会形態の課業

 

第11章 体育における計画と管理

1. 体育の過程を最適に構築する手段の計画と管理
2. 計画
2.1. 計画の前提
2.2. 計画の規模の決定、計画の個別の要素、それらに対する視点
2.3. 三つのタイプの計画-それらの形態と方法の特徴
2.3.1. 長期計画の形態と方法
2.3.2. 中期計画(各段階の計画)
2.3.3. 短期計画(当面の計画)
3. 管理
3.1. 体育における管理-その一般的特徴
3.2. 日常管理および各サイクルと段階での管理-その特徴
Ⅱ.専門的な体育スポーツ活動における理論と方法論

第4部 スポーツ、スポーツトレーニング

 

第12章 社会におけるスポーツ

1. スポーツ関連の概念
2. スポーツの種目の多様性
3. スポーツの成果、結果(記録)の向上に影響する要因とその傾向
4. スポーツの社会的機能とスポーツの主な分野
4.1. スポーツのもつ機能は具体的条件に応じて変化、発達していく
4.2. スポーツの各分野の共通性と特性

 

第13章 スポーツトレーニング

1. 体育全体に占めるスポーツトレーニングの位置とその特殊な性格
2. スポーツトレーニングの手段、方法、基本的種類
2.1. 手段と方法
2.2. 基本的種類
3. スポーツトレーニングの法則の特殊性
4. スポーツトレーニングの構築(トレーニング過程の構造)
4.1.ミクロ・サイクル(小規模なトレーニング周期)の構造
4.2.メゾ・サイクル(中規模なトレーニング周期)の構造
4.3.マクロ・サイクル(何ヵ月にも及ぶトレーニング周期)の構造
4.3.1. スポーツトレーニングの基本的周期性
4.3.2. マクロ・サイクルの各時期におけるトレーニングの特性
4.4. 多年にわたるスポーツトレーニング
第5部 職業訓練

 

第14章 職業訓練

1. 職業訓練の必要性と解決すべき課題
2. 職業訓練の手段と方法
2.1. 手段の特徴
2.2. 職業訓練における課業-課業の構築方法とその形態

 

第15章 労働を合理的に組織する上での体育

1. 労働活動の科学的組織(NOT)、体育の社会的意義と課題
2. 労働活動の科学的組織(NOT)において体育の占める位置、およびその諸形態
2.1. 就業時間中に行われる体育
2.2. 就業時間外に行う体育
2.3. 「職場の体育」と職場外で行われる体育、および両者の関係
付録(ソ連国民体育プログラム)