2009年 7月 の投稿一覧

コオーディネーショントレーニング|ニュースレターNO.220

今回のニュースレターが配信されると、帰国まで後1週間になっています。3週間経過したわけですが、どうなっていることやらまったく想像がつきません。前回と同様、出発前に書いています。中国でのことは、次回のニュースレターで紹介したいと思いますので、楽しみにしてください。

今回のニュースレターは、何度か紹介しているコオーディネーションについてです。コオーディネーションというものをどのように考え、どのように実施すればよいのか、適切な示唆を与えていただいているものがあります。

コオーディネーションでたびたび登場される実践面でのコオーディネーション研究の第一人者である徳島大学の荒木秀夫氏がSportsmedicine 2007(「新コオーディネーション論」構築まで)で話されていることは、非常に参考になります。

巷では、これがコオーディネーション能力を高めるエクササイズだという紹介が多々ありますが、「何をするか」ではなく、「コオーディネーション能力を高めるとはどういうことか」という基本的な理解が何より大切です。それがわかれば、ラダートレーニングに見られるように、毎日毎日同じことを繰り返すことの意味がよくわかるはずです。

荒木氏は、トレーニングジャーナルやSportsmedicineでコオーディネーションについて数多くの情報を提供されています。それらを集めますとかなりの量になります。ゆっくり読み返してみますと、なるほどと思うことばかりです。今回は、先のSportsmedicineの中からピックアップして紹介したいと思います。

『我々が運動をどう捉えているのかという実態と、頭の中の属性としてのもの、例えば、「運動」という言葉1つをとっても、中学や高校の物理学の問題で、大砲の弾が何度の角度で飛んでいったとして、その角度が何度で、初速度がどれくらいなら、どこに落下するかというものがあるが、「ただし、空気抵抗はないものとする」とされている。

その前提で何秒後にはその弾はどこにあると計算するのだが、実際には、我々の頭の中では、動いているものを、止まっているものとして、それが連続していると考え、何秒後、何時間後にはどこにあるかを計算する。しかし、実際には一瞬たりともそのものは止まっていない。

我々の概念としては、便宜的に時間や空間を設定する。有名な「ゼノンの詭弁」のように、いつまでたってもアキレスは亀を追い越せないというような1000年以上哲学者を悩ましてきた問題があるが、我々の頭の中にある概念が実際のものと矛盾したものを受け入れて、外に向かって、実際にあるものを再解釈するのが弁証法的な考え方である。

実は、運動において、現場の指導者が行っていることはまさにこれである。テレビのスポーツ解説者はよくわけのわからないことを言っている。例えば「ボールが走っている」とか、「ボールが重い」とか。ボールは投げられてくるのだからもともと「走っている」し、ボールの質量は誰が投げても同じなのに、そういう表現をする。考えるとよくわからないが、やっている人たちにはよくわかる。

では、それが意味しているのは何か。逆に意味がないと思う立場は、分析的であり、分類していこうという立場である。スポーツの本質は何かと考え、1つずつひもといて外していくと、よく見たら何もなかったということが起こる。しかしその外していったいくつかの間の「関係」の中に、スポーツ、運動としてイメージできるものがある。

例えば、1つの筋線維や神経細胞を調べていくと、それが野球やサッカーやアメリカンフットボールとどうつながるのかわからなくなる。しかし、分類したものをまとまった1つのスポーツという現象として捉える思考を保証しているものは何かと考えると、それが全体、あるいは互いの関係をどうみるかという我々が本能的に持っているコオーディネーションなのである。

例えば「かわいい」とか「立派な人間である」とか印象的に表現するが、では「彼がどれくらい立派か、測定してみよう」といっても測定できるものではない。

結局、現場でスポーツをずっとしている人たちは、1つの筋線維や骨格の働きを組み合わせていくのではなく、まず全体から入る。では、研究も全体から入ったらどうなのか、そういう発想がヨーロッパ的なスポーツ科学の原点だったと思われる。

例えば、あるカリスマ的な指導者がいて、あっという間に跳び箱を跳ばせてしまう。すると「彼はすごい」となるけれど、それで終わってしまえば、社会の財産にならない。その「すごい」ものをもっと理論的に整理してみようというのが東ドイツのスタートだったと考えられる。

それはある意味では科学的なものも動員するとともに、科学的には説明しきれないものもあえて加えた。科学的なものとそうでないものを、長い間観察し、まとめ、理論化してきたものを整理して、誰もがこの理論に基づいて実践的な指導ができるものを継承していく。これが東ドイツでのコオーディネーションについての考え方である。』

『生物の系続発生は、体幹から外に向かって完成されていく。それは、初心者はどういう動きをするかと言うと、卓球だと、体幹を卓球台に向けて、体幹は動かさず、手先だけでラケットを振る。ところが熟練者は、上体を曲げて、体幹のひねりも入れて振る。

なぜ、初心者はそうなるか。ラケットを振る動作で、手首をどうするかは、その情報を得るため肘を固定したほうがよい。前腕の動きに関する情報は体幹を固定するほうがよい。最初は動きがよくわからないので、手先の動きを行うためには、最小限の動きで体幹は動かさないということになる。

そのほうが情報を得やすいからである。体幹の動きを制御できるのなら、例えば、7.5度体幹を傾けて、また7.5度戻してという能力が出てくると、全体の動きとして補正しやすくなる。

例えば、指先だけで行う運動でも、今のラケットを振る運動でも、体幹と末梢とは連動して、本来の動きになる。末梢からであっても、体幹からであっても、目的そのものは手の動きそのものでなく、手先をスムーズに動かすには、前腕はどうするか、肘はどうするか、上腕はどうするか、肩はどうするかとなる。

その動きの土台となるのは、手先から情報が入り、体幹へと向かうのか、体幹から発して末梢へ、外へとなるのか。大雑把に言うと、生物の系統発生は、体幹から外に向かって完成されていく。

ところが、学習は末梢から入ってこようとする。ピアノを弾くにしても、指先のほうに意識を持っていく。ピアノを弾くにしても、テニスをするにしても、道具を持って行う前に、原点に戻って、体幹と下肢の動きをやる。

中でも一番の原点は、骨盤から肩までの部分であるが、ヒトの体形を見ると、胴体、体幹の都合で上肢もついているようなものである。体幹がボス、体幹をどうするかという発想で、そこから手足が出てきている。四足動物と全く異なるのは、体幹に対して下肢の重心の支え方が違う。

まずは脊柱を使った動きによる刺激、次に体幹と下肢、そして首。だから、頭の上から1本の芯を通した動きを制御できるかどうかが最優先。あとは、それができると、上腕の内転・外転や、前腕の屈曲・伸展で最後に回内が入るというような動きが短期間にできる。

体幹を左右に振ってと言うと、子どもは首からリードしようとする。生物の発生もそうで、下等な段階では首から入る動きがある。子どもでも動きの刺激が十分入るようになると、体幹を左右に振っても、首は斜めにならず立ったままになる。オートバイのレーサーは、コーナーを回るとき、バイクも身体もインに激しく傾きますが、首は立っている。

ショートトラックでも同じで、内側の指先で氷面上に触れていますが、あれは支えているのではなく、皮膚刺激を得ている。

それほど高度な動きではなく、原点に戻って、身体が「く」の字になったときに、どういう感覚で吸収できるかという基本的なトレーニングを積んでから、ラケットを握るほうが進歩は断然早い。サッカーでも、蹴り方はどうだこうだと、どんなに理屈を教えても、教えるほど身体は硬直して胴体も動かなくなる。

身体をねじる動きでどういう刺激が入ってくるかをいったん押さえておけば、その後の動きは全然違う。それも1ヵ月も2ヵ月もかかるものではなく、1日何十分で十分で、それくらいヒトは、小さいとき、1~5歳くらいに、いやというほど体幹の動きを経験してきているのに、言葉が邪魔して、それを忘れてしまう。

それでラケットはああいうふうに振るんだ、イチローの振り子打法はいいねとなってしまう。』

『ラダートレーニングで、市販のラダーは一定の幅であるが、実際の場面では決まった幅で動いていくわけではなく、常に変動しているので、自分たちで作ったラダー、これは間隔が一定ではなく、ランダムなものを用いている。それで慣れてきたら、さらに音で外乱刺激を入れて、音を合図にスピードの緩急をつけていくというようなことをする。

次の段階では、ラダーのコースを直線ではなく、折って変化をつけたり、課題を変化させたり、さらに次の段階では、視線を下ではなく、誰か立たせてその人が出すサインを見て、そのサインに応じて動作の緩急を変化させたり、ストップ動作も入れたりして変化をつける。

ラダーも含め、トレーニング器材は市販するために一般化されている。そうすると一般化されたため、トレーニングも同じようになってしまう可能性が高い。そうではなく、トレーニング自体もコオーディネーションしていく必要性がある。

子どもは外乱刺激をそのまま受け入れ、楽しんでくれる。例えば、野球なのにラグビーボールを採り入れると、それを楽しんでくれる。しかし、大学生の陸上競技部でスキップのリズムを途中で狂わせるようにすると、その狂いも一定のリズムにしたがるというか、規格化してしまう傾向がある。

2~3日行かないと、ルーティンワークになっていて、元の目的とは異なったものになっている。子どもは、どんどん発展させていって新しい外乱が出てきている。

子どもはつくるのは早いけれど、壊すのも早い。大人の脳とからだは壊すのを嫌がる。一度つくったものを壊そうとしない。自分ができているパターンにこだわるから、ワープロが便利だとわかっていても、手とペンで書くほうにこだわってしまうのがその典型例で、動きもまさにそうである。

子どもは動きのパターンをいつ壊してもいい。言葉でもアメリカに行くと、親より早く英語を話すようになるけれど、日本に戻ると、親より早く英語は捨ててしまえる。動きもそうだが、その経験、こっちに伸ばして、こっちはどうしてということを、実は脳が地ならししていて、どんな種でもまいてという状況になっている。

「壊し」ということを考えると、できつつある動きをいったん壊すというのは、オーソドックスなベンチプレスから突然外乱を加えて、それに順応させてようという刺激を考えればよい。一方、最初から外乱刺激を加える方法もある。

例えば、ある程度サッカーをやっていて、そこからある技術を覚えるのに比較的時間がかかり、むしろ小学校でちょっとやった程度、以降はほとんどやっていないという学生のほうが覚えるのが早い。うまい選手については「あいつは才能がある」と思い、6年間やっていてもうまくない選手については「才能がない」と決めつけることが多いが、そうではない。

ある程度そこそこやってきた選手にチームプレーをさせようというときには、最初は「壊す」ことから始める。通常は前を向いてボールを受けるのを、横を向いて受けさせたりして、これまでの形を崩して行うと早く覚えたりする。それを「クセがあるな、そのクセを出さないようにしろ」と言っても、それは無理である。』

『コオーディネーショントレーニングによって、確かにパフォーマンスやスキルが向上したと正当に評価するのはどこによりどころがあるか。それは、やっている選手が気がつくということである。通らなかったパスが通るようになったときの選手の信念や自信などが、指導者にとっては一番のよりどころ。

コオーディネーショントレーニングをやってどんどん上達していく選手がいて、それは何かとなったとき、あるトレーニングで得た感覚がほかのときにも使えると理解し得た選手である。その説明の論理で今四苦八苦しているのだと思う。カテゴライズしたりしていくのはそういうことだと思う。

コオーディネーションのトレーニングで、「1+1」が3とか4になることがある。その反面1+1が0.5とか0.4になってしまう場面も出てくる。

コオーディネーションに対して開けている人は、どんどん新たなイマジネーションが浮かんできて、自分なりのコオーディネーションのトレーニングをつくっていくが、いわゆるルーティンワークを行ってきた、しかもある程度運動をしてきた人はそれ以上いかなくて、「なんでこんなことをするんだ」と言って閉じてしまう。

その辺は、教える側の柔軟な場づくり、言葉かけ、そういうところに帰っていくと考えるのかというと、そうではなく、その場合2つの問題がある。

1つは、コォーディネートしていく方向での外乱刺激が成立しているかどうか。つまり、1+1が0,5になるのは、1つは上の段階に進むとき、2つのサブシステムがうまくくっついて新しい機能に発達するが、そのとき、それまでできたことができなくなったりする。それがスランプとかプラトー。もう1つは、外乱刺激が強すぎて、壊すだけで、くっつけることがなくなってしまう。

例えば、算数の好きな子が小数が入ってきたとたんに算数が嫌いになったりする。それは強い負荷を与えすぎたときである。ある大学では、入ったときには物理・化学・生物のどれを取ってもよいが、人気があるのは物理。その物理で量子力学が入ると、一番嫌いなのは物理になってしまう。

これが1+1が0,5になった状態である。つまり、外乱刺激が強すぎる。だから、外乱刺激が適切かどうかがまず1つ。

もう1つは、コオーディネーショントレーニングの大原則は、そのトレーニングでの動きが完成されるまでやらないということである。例えば、ラダートレーニングで完成されるまでやると、逆の結果が生じてしまう。コォーディネ一ション能力を破壊してしまう。

つまり、ラダートレーニングは天下一品だけれど、アメリカンフットボールをやらせたら下手ということになってしまう。だから60%程度、70%程度で次の練習に入る。ある練習をやったときに、それが完全にできるようになったときが危ない。

目指しているのは幹が伸びている天の方向なのに、そこから枝が出てそっちの方向に行ってしまう。国際ラダー大会があればよいが、そのラダーで獲得した動きを消すのが大変になる。「あれをやる前はアメリカンフットボール、うまかったのに」となってしまう。だから、60%、70%で次の練習に入るようにする。これが大原則である。

ウエイトトレーニングを行うと、競技よりそっちが面白くなって、トレーニンクの専門家になったという人もいる。

日本ではトレーニングと言うと、ウエイトトレーニングなど筋力やエネルギー的なものを向上させる意味合いが強いが、欧米では、トレーニングと言うと、もっとスキルや動きそのものを高いレベルに持っていくものを言うことが根本にある。』

高血圧は薬で下げるな|ニュースレターNO.219

6月25日に発刊された「スポーツトレーナー虎の巻」ですが、多くの方から購入希望をいただきありがとうございました。好評を頂き、嬉しい限りです。一人でも多くのトレーナーや指導者の方々に読んでいただきたいと思います。

さて、このニュースレターが配信されるときは、中国に行って1週間が過ぎているころです。今月のニュースレターは、中国出発前に書いています。6月の末には嬉しい知らせが届きました。それは一昨年から指導に行っている北海道の士別の高校生が4種目でインターハイの陸上競技に出場することになりました。

特に予想もしなかった400mリレーでの出場は、正に快挙でした。100mのベストが11秒3-4が最高の選手しかいないチームが42秒台で走ったという事実は考えられないものでした。後2種目出場の可能性があったのですが、後一歩ということでした。レベルもさほど高くない選手たちがこのような快挙を成し遂げたことは賞賛に値すると思います。指導者が一つ一つ課題を積み重ねていかれたことの成果だと思います。

今年のインターハイは、奈良で行われます。私の帰国は30日が予定なので、ぜひ見に行きたいと思っています。

ということで、今回のニュースレターは、血圧の問題です。私も、心臓の手術後、血圧の変動でいろいろ悩みました。そんなこともあって興味深い本を見つけました。それは浜六郎著「高血圧は薬で下げるな!(角川oneテーマ21,2007)」です。参考になるところも多く、気に掛けておくことも必要だと思いますので、抜粋して紹介したいと思います。興味のある方はぜひ著書をお読みください。

『病院での受診や検診で尐々高めの血圧が出たからといって、むやみに怖がる必要はありません。医師はすぐにでも降圧剤を飲むように言うかもしれませんが、相当高めの高血圧でないかぎり、その必要はまずありません。

むしろ降圧剤を飲むことで、自立度が低下したり、死亡の危険が増す可能性があることをさまざまな調査から見てきました。にもかかわらず、高血圧の基準値はますます低く設定されてきています。どの程度の血圧値からほんとうに危険が高まるのかについては、もう一度よく考える必要があるのではないでしょうか。

その前に、あなたは本当に高血圧症という「病気」なのでしょうか、もう一度考え直してみてください。というのも、高血圧の判断基準がやたらと低めに設定されているだけでなく、そもそも病院で測った高血圧の数字は、あなたの体のほんとうの状態を表しているのかという疑問もあるからです。

血圧は、一日のうちでも激しく変動します。これは、激しい運動をすれば、筋肉や脳がたくさんの酸素と栄養分を必要とするために心臓を働かせて血圧を上げ、組織にたくさんの血液を送り込むからです。ストレスがあると血圧が上がるのは、ストレスの原因になっている危機的な状況を解決するために脳がしっかりと働く必要があり、脳に血液をたくさん送り込み、酸素と栄養分を補給するためなのです。

「はじめに」で紹介した、碁をする人が先を読めなくなった例は、まさしく血圧を下げたために脳が酸素不足、栄養不足となり働きが鈍ったからと考えられます。オペラ歌手の声の張りがなくなったのもそのためと考えてよいでしょう。

ただし、ずっと血圧が高い状態が持続するのは確かによいことではないかもしれません。血管に強い圧力がかかりすぎて、血管がもろくなるかもしれないからです。しかし、一時的な血圧上昇に合わせて血圧を下げていたのでは、脳やほかの体の大切な組織が酸素不足・栄養不足に陥り、不都合が生じることは容易に想像がつきます。

理解してほしい肝腎なことは、血圧が高くなるのは、たいていの場合、必要・理由があってのことですので、一時的な変動にとらわれてはいけないということです。朝は一日の活動を始めるために血圧は上がり、そして午前中続きます。

昼食時に尐し下がり、午後の活動再開とともに上昇し、「日中でもっとも高くなります。そして、夕食時また下がり、就寝とともに下がり、睡眠中にもっとも低くなります。途中で激しく運動をしたり、根を詰めた考え事や計算などをすると血圧は上がります。ですから、一日のうちのいつ血圧を測ったか、血圧を測る前には運動していたか、考え事をしていたか、ドキドキしていたかにより、その値は大きく変わってきます。具体的な例をご紹介しましょう。

NPO法人医薬ビジランスセンターが編集発行している医薬情報誌「薬のチェックは命のチェック」の第三号は、高血圧について特集しています。血圧が一日のうちでいかに大きく変動するか、ストレスや運動が影響するか、家庭での計測の勧めなどを解説しています。

これを読んだ読者から、手紙が届きました。その方の夫が、受診して二度測って二度とも血圧が高いので降圧剤を勧められていたのですが、本誌を読んで思い当たることがありました。二度とも、夫は受診のために仕事を急いで片付けて病院へ駆けつけていました。しかも季節は三月、まだ寒さが残っています。そこで血圧測定器を購入し、毎日夕食後1時間ほどして測ってみると、血圧はごく普通の値で安定しているというのです。

人にもよりますが、病院では血圧が高いといわれないかと心配して、血圧が上がる人がかなりいます。しかし、単にストレスだけでなく、前記の人のようにあわてて診察室に駆け込んで測った場合にも血圧は上がります。白衣高血圧とは、病院における血圧測定でみられる、そうした影響を総合的に表した言葉です。単に医者が怖いというストレスだけではないのです。

例えば暗算をするだけで、血圧は20~30ほども簡単に上がります。肉体を激しく使うと、さらにそれ以上に血圧が上がります。健康な人でも、緊張状態や運動後に最高血圧が180くらいに上がることがありますから、そのときの血圧に新基準を適用すると、誰でも簡単に高血圧症といわれてしまうのです。

ですから、まずは血圧の測り方に注意しましょう。血圧をうまく測ることで、安易に高皿圧症のレッテルを貼られることがないように自己防衛しましょう。高血圧症のレッテルを貼られなければ、降圧剤からそれだけ遠ざかることができるからです。』

『病院で測定した一度や二度の値で、高血圧と決めつけてしまう必要はありません。まず、正しい測り方を身につけましょう。

また、さまざまな調査で見てきたように、多尐血圧が高めでも健康で長生きできるという結果が出ていることも頭に置いて測るといいでしょう。そうすると、変な緊張感がなくなるはずです。

WHO/国際高血圧学会のガイドラインでは、血圧の測り方として「静かな所で数分間座ってから測定する」方法を推奨しています。また、日本の高血圧治療ガイドラインでも「尐なくとも15分以上安静座位の状態」で測定することを推奨しています。しかし、このような状態で測定されている人はいないのではないでしょうか。

診察室では、たいていの医師は、診察室に入ってきたらすぐに血圧を測ります。そのとき、「また今日も高いといわれるのでは……」と思いながら診察室に入っていく人も多いでしょう。かなりの人が診察室の雰囲気に緊張しがちです。こういう状態で血圧を測ると、血圧は必ず高くなりがちです。その雰囲気に呑まれないように落ちついて、きちんと深呼吸をすることが非常に大事です。

病院で測る場合は、とくに以下のようなことに注意が必要です。

1.血圧を測る際の精神状態

「ドキドキ」「イライラ」していたり、今日も血圧が高いといわれないか心配だったりすると、交感神経が緊張して血圧が上がる原因になります。
気持ちをゆっくり落ち着けましょう。病院で測るとどうしてもドキドキするという方は、自宅で測るようにしましょう。自宅で測って高くなければ病院には行かないほうがよいでしよう。検診で多尐高いといわれても、自宅で測りなおして高くなければ病院には行かないほうが賢明です。

また多尐高めでも、糖尿病など別に持病があるのでなければ病院に行かないほうがよいでしょう。病院では尐しでも高めの血圧を見つけると「高血圧症」という病名をつけたがりますから。

2.運動直後は血圧が上がる

運動直後は血圧が上がります。慌てて病院に入って、そのまま血圧を測るのは最悪です。血圧は変動が激しいので、しばらく安静にした状態で測るようにしましょう。

3.姿勢は正しいか?

血圧を測る姿勢も問題です。横になって血圧を測ると高めに出ます。血圧は、必ず座った状態で測るようにしてください。

4.血圧の測り方が速すぎないか?

血圧の測り方が速すぎると、高く出すぎたり低く出すぎたりします。血圧は、水銀柱をゆっくりと下げながら測ることが重要です。しかし、医師に対して「先生の測り方は速すぎるのではないですか?」などといえる人は尐ないでしょうから、「測り方が速いのでは?」と思ったら、尐々高めに出ても気にしないことです。自宅で使えるデジタル血圧計は、比較的ゆっくりと測る仕組みになっていますので大丈夫です。

5.マンシェットの巻き方は正しいか?

血圧を測るときに腕に巻く布をマンシェット、またはカブといいます。マンシェットは正しく巻いていますか?マンシェットを分厚い服の上からや、下着が団子状になっている上から巻いて測った場合、血圧の値は不正確です。きつく腕を締めつけているような場合は低めに出ます。

マンシェットは、できるだけ服を脱いで巻いて測ってください。薄いシャツならばその上から巻いても構いませんが、マンシェットの下でシャツが丸まらないように注意してください。

6.左右の違いに注意

血圧値は、右腕と左腕で違うことがあります。左右の比較測定を一度もしたことがない人は、一度してみてください。左右で大きく違いがあれば、医師に報告しましょう。

7.脈は規則的か?

不整脈のある人は、血圧が脈の間隔の違いで変動します。これは大切なことですが、意外に見過ごされています。不整脈のある人は、血圧を何回か測定して、いちばん高く出る値といちばん低く出る値を見ておく必要があります。家で何回か測定し、その値を医師に見せるようにしましょう。

8.深呼吸をしてから血圧を測る

先ほどもいいましたが、血圧を測る前には、最低でも深呼吸を10回以上してから測るようにしてください。高本さんのデータでも証明されているように、それだけでも血圧は簡単に下がります。降圧剤を処方されるリスクを避けましょう。』

『病院で血圧を測ると、いろいろ気をつけても、どうしても高めに出がちです。ですから、自分のほんとうの血圧を知る意味でも、血圧は自分で測る習慣を身につけましょう。家庭で血圧を測る場合の注意点には以下のようなものがあります。

1.測定に適した時刻

家庭で血圧を測る場合は、測定に適した時刻に測るようにしましょう。早朝や夜更けは血圧の上下変動が激しいので、普段の血圧とはいえません。日中のゆったりした時間に測るようにしましょう。日中仕事をしている人は、夕食後1~2時間後の決まった時間に測ることを習慣にするとよいでしょう。

 

2.何かした直後は避ける

運動や食事、入浴、習い事など、何かをした直後は、運動や神経の興奮により血圧が上がっているので、血圧を測るのは避けましょう。できれば毎日同じ時聞帯で、ゆっくりくつろいでいるときに測るようにしましょう。

 

3.マンシェットは上腕部、心臓の位置に巻く

自分でマンシェットを巻いて測る場合はとくに、マンシェットの巻き方とともにマンシェットを巻く位置も大事です。心臓と同じ高さに巻くと、より正確な血圧が測れます。ですから、座って上腕部にマンシェットを正しく巻いて測ることが大事です。

 

4.その他の注意点

高めに出たら、血圧の原因を探ってください。食事に塩分が多すぎないか、運動不足、緊張するようなストレスや心配事がないか、測り方は正しいかなどをチェックして、それらを取り除くだけで、血圧はずいぶん下がります。』

『長時間、机に向かって仕事をしているとき、自分の呼吸に注意してみてください。小さくなっていませんか。そうです。呼吸が浅く小さくなっているはずです。こんなとき、炭酸ガスが体内に溜まり、血液がやや酸性に傾きます。

血液はPHが7.4と弱アルカリ性です。呼吸をしすぎて過換気でアルカリ性になりすぎるのもよくありませんが、浅く小さな呼吸を続けていると、血液がだんだん酸性に傾いてきます。血液をもとの弱アルカリ性に戻すには、深呼吸が手っ取り早いのです。アルカリ食品がよいなどといわれますが、深呼吸はもっとも早く、血液を正常の弱アルカリ性に戻す働きがあります。

積極的に深呼吸をしない場合、たとえばストレスが強い場合や、うつ状態になっている場合には、ため息が出ます。これは、血液がある程度酸性に傾くと、脳からの指令で自然と大きな息をさせ、正常の弱アルカリ性を取り戻すようにしているのです。この自然の摂理を理解すれば、深呼吸がいかに大切なことかよく分かるでしょう。

だから、思わずため息が出るようであれば、それは呼吸が浅く小さくなっている証拠と考えてよいのです。改めて積極的に深呼吸をしてください。

私は今、パソコソに向かって黙々と仕事をしていますが、そうした間には時々、深呼吸をします。そうすることによって、浅く小さな息になってしぼんでしまった細い気管支や肺胞を、思いっきり広げることができるのです。とても大切なことですし、そうすることで反射的に血圧も下がるのです。

しぼんでしまった細い気管支や肺胞を広げるには、息を大きく吸う必要がありますが、炭酸ガスを追い出すためには吐く息がとても大切です。片手でもう一方の腕の脈を診ながら、深呼吸をしてみてください。とくに息を吐くときに、しっかりと大きく吐いてみてください。

息を吸うときよりも、吐くときのほうが脈が尐しゆっくりしていませんか?あまりこれがはっきりしない場合は、朝目覚めた時すぐ起き上がる前に試してみてください。私などは、朝起きてすぐ、脈がゆっくりしているときには、息を吸うときと吐くときでは1.5五倍くらい差があることが多いのです。

息を吐くときに脈が遅くなる。このことをよく頭に入れておいてください。これは息を吐くときに血圧が下がるということに直結します。

「ヨガ」や「太極拳」、あるいはさまざまな呼吸法などの健康法があります。これらにはすべて、「吐く息」を大きくすることで血液を正常の弱アルカリ性にし、脈を落ち着かせ、血圧を安定させる作用があるのです。

ですから、会社などでストレスを感じたときも同じように深呼吸をうまく取り入れて、血圧を低く保つ習慣を身につけるとよいでしょう。例えば、大事な打ち合わせや会議には、大きく深呼吸を10回ほどしてから臨むようにします。また、イライラしたり情緒不安定になったりしたときも、意識して深呼吸をすることで血圧の上昇を防げます。

根を詰めて仕事をしているようなとき、1時間に何度か深呼吸をすることはとても大切なことです。』